リード エグジビション ジャパン(以下「リード社」)は、日本で多数の展示会を主催する会社です。私も仕事で、リード 社 が主催する展示会に出展したことがあります。最近のコロナウィルス感染症の拡大の中で、この記事を書いている時点では展示会の開催を強行しています。これについて、非難の声もあるようです。
展示会を強行しても、参加者側が多数の人が集まる場所へ行くことを禁止されていることが多いため、実際には集客が芳しくないようです。出展者が出展を直前ないしは会期中に取りやめることも多いようで、それによって一層参加する人が減る悪循環になってしまっています。
一例: 2月26日~28日に開催された「ものづくり展」についてのTogetterのまとめ記事
https://togetter.com/li/1473851
ただ、おそらくは開催を中止したくてもできないのではないかと思います。この記事のタイトルも「中止しない理由」ではなく「中止できない理由」とつけたのも、そうした推測があるからです。
まず、契約がどうなっているかというと、契約書には以下のような内容があります。この内容は、Googleで検索して見つけた「ネプコン ジャパン」という展示会の契約書からの引用ですが、他の展示会と共通と思われます。
展示会の中止
https://www.nepconjapan.jp/content/dam/sitebuilder/rxjp/nepcon-japan/documents/2021/jp/01-exhibit/inw_21_doc_contract21_1223.pdf
本展示会が開催される土地建物が入場に不適当と主催者が判断した場合、または本契約書に基づく本展示会の開催または主催者の履行が「不可抗力的原因」で妨害されたと主催者が判断した場合には、主催者は本契約書に基づく契約または本展示会(またはその一部)を中止することがある。(中略)
なお、主催者は、理由の如何にかかわらず、本契約書に基づく契約または本展示会(またはその一部)を中止した場合でも、主催者は出展社に対して残余展示日数を基盤として日割計算した展示小間料金の払戻しをする以外は責任を負わないものとする。
この文章にあるように、リード社が中止とする場合には「 残余展示日数を基盤として日割計算した展示小間料金の払戻し 」が必要になります。開催前の中止ですので、出展料は全額払い戻しになります。
一方で、事前の準備にかかる費用や宣伝料・ビッグサイトなどの会場を抑える必要などはすべて必要になります。つまり、中止をすることで、リード 社 が支払うべき負担は小さくありません。
その上で、考慮すべき点が2つあります。1つは、リード社は展示会ビジネスのみの会社であり、多数の展示会をほぼ毎週開催しています。どれかの展示会を中止にするということは、必然的に他の全ての展示会も中止しなければ辻褄が合わなくなります。1つの展示会の費用が仮になんとかなる金額であるとしても、それが多数となるとダメージは莫大になります。 仮に展示会の開催が可能になる状況に世の中が改善したとしても、「来週の展示会から再開」ということはできません。少なくとも1ヶ月か2ヶ月は準備時間が必要です。 そのため、すぐに展示会が実施できる状況になったとしても、長期間にわたって開催できない状況となってしまいます。
そして、もう1つは、中止してしまうといつ再開できるか全くわからないことです。中止することは簡単ですが、再開してOK、というのは誰がどう決めるのか全くルールがないことです。数値的・心理的な状況が改善したとしても、自主判断で展示会を再開し、その展示会で感染者が出てしまうとしたら、企業としてのダメージは計り知れないものとなります。誰かの「お墨付き」が必要ですが、誰もそれを出せる人がいません。
(少なくとも日本には、そうした責任を負った上で「OK宣言」を出せる人は誰もいません。WHOの終息宣言くらいでしょうか。)
こうしたことを考えると、展示会を中止することは企業としての命取りになります。それであれば、参加者がほとんどいないとしても、「十分な対策」をした上で展示会を開催し続けるしかないのです。多少の非難の声があるとしても、少なくとも今契約が完了している展示会は実施しなければなりません。倒産して非難を受けるよりはマシ、という判断でしょう。
最後に、念のためですが、私はリード社の関係者ではなく、内部事情は知りません。ただ、おそらくは上記のような状況なのではないかと思います。
追記:
さすがにこの状況で強行することはできなかったようで、4月開催は中止(というか延期)にしているようですね。ただ、「中止」ではないようで、秋などの代替開催と「統合」で、出展者から受け取っている出展費用は可能な限り手元に起き続けるようです。